『ガール・ウィズ・ニードル』★★★★

『サブスタンス』★★★★★

『タイヨウのウタ』★★★★★

(満点は★★★★★)





16日(金)から、以前紹介した外山文治監督の短編3部作「東京予報」が公開されます。
『ハルウララ』、『名前、呼んでほしい』、『forget‐me‐not』の3作品。
クラウドファンディングで寄付をしたので、エンドロールにボクの名前が入っているはず。ご覧になる方は、頑張って見つけてみて下さい(笑)。
さぁ、今週は3本です!




『ガール・ウィズ・ニードル』

は、実話にインスパイアされた物語。


第一次世界大戦が終わった頃のデンマーク。
コペンハーゲンの衣料工場で働くカロリーネは、夫戦争に取られ、夫は未だに行方知れず。アパートの家賃が払えないほど、生活に困っていたのです。
工場のオーナーに、戦争遺族としての給付金申請を直談判しますが、失踪では無理だと断られてしまいます。
しかし、こうも言われるんですね。「困っていたら、頼ってくれていい」と。
ふたりは体の関係を持ち、カロリーネは妊娠。結婚を期待しますが、身分が違いすぎます。相手の親の猛反対を受け、カロリーネは、お腹の子と一緒に路頭に迷うことに。
公衆浴場のバスタブの中で、工場から盗んだ長針を使って堕胎を試みるカロリーネ。しかし、それに気付いたダウマという女性に止められます。
ダウマはキャンディー店を営んでいましたが、それは表向きの顔。裏では、望まれない子の養子縁組を、秘密裏に取り持っていたのです。
カロリーネはダウマのもとで、乳母として働き始めるのですが…。


全編モノクロで、不気味な効果音と陰影が印象的な作品です。
貧困から抜け出したくても抜け出す術がないカロリーネ。当時のデンマークには、そんな女性がたくさんいたのでしょう。
マグヌス・フォン・ホーン監督は、カロリーネが当時のデンマークだと。ただ、そんな闇の時期を経て、今の幸せな国があるとも語っています。
ダウマの裏の顔はすぐに明らかになりますが、そこからがまたすごい。
ラストシーンだけはカラーにしてもいいのではと思うのは、素人の浅はかさ?まだまだ闇は続くのかもしれませんから。
確かに衝撃作です。★4つ。




『サブスタンス』

は、ホラー・エンタテインメント。


女優として一時代を築いたエリザベス。
50歳になった今も、エアロビクス番組の人気インストラクターとして活躍していました。
ところが、ひょんなことから、プロデューサーの本音を耳にしてしまうんですね。
陰でボロクソに言われ、遂には番組の降板を告げられたエリザベス。
そんな失意の彼女のもとに、“サブスタンス”という新薬を試してみないかという誘いが届きます。
それは未来の再生医療。入手したエリザベスが恐る恐る使ってみると、何と背中からもうひとりの自分が現れたではありませんか。
それは若々しく、顔も今のトレンドそのもの。その分身をスーと名付け、再び世界の注目を集めることに成功するのですが…。


メチャメチャ面白かったです。
確かに、ホラー・エンタテインメント。コミックの要素すら感じますが、いわゆる“ルッキズム”へのアンチテーゼでもあります。
エリザベスを、デミ・ムーアが体当たりで演じていること自体が、すごく皮肉めいていて。だって、年齢なんて超越している存在ですから。美しい。
エリザベスとスーの互換には厳しいルールがあります。それでもスーでいたい自分が、暴走を始めるわけですョ。まぁ、確かにそうなるよなぁと。
エリザベスとスーには、どんな未来と結末が待っているのか。それは見てのお楽しみ!
「人生は足るを知れ」ってことですかね(笑)。
劇場に是非!満点!★5つ。




『タイヨウのウタ』

は、日本の大ヒット映画『タイヨウのうた』の韓国リメイク。


ミソルは色素性乾皮症という難病を抱えていて、太陽の光を浴びると高い確率で皮膚がんになってしまうため、昼間は家の中で過ごさなければなりません。
そんな彼女の楽しみは、オリジナル曲を作って歌うこと。そしてもうひとつ、車でフルーツを売りに来るイケメンくんを眺めることでした。
ある日のこと、いつもは昼にしか来ないその車が、夜、家の前に止まっているではありませんか。ミソルは慌てて家を飛び出し、また夜に来るよう依頼。繰り返し果物を買うことで、彼とも親しく会話ができるようになったミソル。
彼の名はミンジュン。俳優志望だと言います。ミソルは曲作りが趣味だと話し、ミンジュンに聴かせるとその歌声を絶賛され、「SNSで配信したらいい」とアドバイスを受けるんですね。
しかし、ミソルは自身の病気のことを、ミンジュンには言え出せずにいたのです…。


日本ではYUIと塚本高史の主演で、06年に公開された『タイヨウのうた』。
ヒロインが恋する相手が、サーファーからフルーツ売りの男性に変わっています。
悲しい結末が待つのをわかって観るのは、本当にツラいですよね。
でも、人の命には限りがある。必ず終わりは来る。どれだけ長く生きたかではなく、どれだけ濃く輝けたかだとも思っています。
“志半ば”という言葉があるけど、人生やりきった人なんて、ほとんどいないはず。だって、いくつになっても大小にかかわらず、喜びは見つかるはずだから。いつ命が果てようとも、みんな“志半ば”。だから、人生だけは自分で評価するしかないんです。
ただ、周りが「あの人は幸せな人生だったね」と言ってくれたなら、「そう思ってくれたならいいかな」と、あの世でニコッと笑えるじゃないですか。
あ、あの世があるかどうかは知りませんョ(笑)。
ツラいほうへの振り幅が大きいほど、幸せへの揺り戻しも大きいと信じてます。だから、ミソルは幸せだったと思います。出会えたミンジュンもね。
韓国映画です。“泣き”のスパイスは、より降りかかってると思って下さい。満点!★5つ。