暴走するトランプ、以前はグリーンランドを売れと言っていたが、今度は武力行使も排除せずと言い出した。
知らない人もいるでしょうが、グリーンランドは1262年にノルウェーの庶民地となり、1775年からはデンマークの植民地、1953年にはデンマークの州となり、そして1979年にデンマークから自治権を与えられ自治領となっています。
つまりデンマークの領土の一部であり、自治権を持つ地域なのです。
2025.05.05 CNN
トランプ米大統領は4日、資源に恵まれたデンマーク自治領グリーンランドについて国家安全保障上必要だとし、同国を手に入れるために軍事力の行使を検討する可能性があると述べた。
トランプ氏はNBCニュースのインタビューで、「そうするとは言わないが、あらゆる可能性を排除しない」といい、「我々はグリーンランドを強く必要としている」「グリーンランドに住む人々はごくわずかで、我々は彼らに配慮し、大切にするつもりだ。しかし、国家安全保障上、それは必要だ」と語った。
トランプ氏が示すグリーンランド領有への意欲は、同国の将来の安全保障に一石を投じている。北極圏では米国、ロシア、中国が影響力を争っている。トランプ氏は、米国が武力行使や経済的圧力によってグリーンランドを奪取することに何度も関心を示しているが、デンマークとグリーンランドはこの考えを断固として拒否している。
一方、トランプ氏は、カナダを米国の51番目の州にするとも繰り返し発言してきたが、カナダの併合のために軍事力を行使する可能性は「極めて低い」と述べた。
カナダ国内での反トランプ感情の高まりもあり、総選挙に勝利したカーニー首相は、6日にワシントンでトランプ氏と面会する予定。
トランプがグリーンランドを欲しがるのは軍事上の問題と地下資源と北極航路でしょうか。
■軍事基地
グリーランドには軍事的にはデンマークとの防衛協定により軍事基地が設けられ、ロシアからのミサイル防衛の要衝となっています。
しかしデンマークは同じ西側陣営のNATO加盟国であり、協力体制はすでに築かれているのではないでしょうか。
出典:【解説】米トランプ次期大統領はグリーンランドをなぜ欲しい?
デンマークはNATOに加盟しており、NATOのバルト海とバルト三国防衛の重要な役割をはたしています。
NATO加盟国であるデンマークの領土を武力侵略とは、NATOにとってもとんでもないことだと思います。
■地下資源
地下資源は一番の目的はレアアースだと思いますが、正当な商取引で入手すべきもの。
軍事力を行使して入手など許されることではないでしょう。
また現在レアアースの精製技術は中国の独壇場。
アメリカがレアアース資源を見つけても、実用化するための技術開発するのにはかなりの年月がかかると言われています。
これは日本にも言える話で、レアア―スの海底資源を見つけても実用化には相当な時間がかかります。
■北極航路
温暖化で脚光を浴びてきた北極海航路ですが、メリットとして次のようなことがいわれます。
- 北極海航路は東アジアと欧州を結ぶ最短の海上ルート。
- スエズ運河経由に比べて30~40%短い。
- 海賊の襲来がない。
- 政治的に不安定な中東を通らない。
さらにアメリカにとっては東海岸と東アジアを結ぶ最短ルートともなりますし、またパナマ運河を使わずに済みます。
パナマ運河の通行量を安くしろとか、アメリカに返せとか言っていたトランプですから、「グリーンランドを売れ、さもなきゃ武力行使するぞ」と言うくらいは当然でしょうか。
グリーンランドの雑学
氷の島グリーンランド。
世界最大の島にして人口は56000人(うち約5万人がイヌイット)。
かつてはノルウェー、そしてデンマークの植民地で、現在はデンマークの自治領(独立国に近い自治を認められている)です。
グリーンランドが発見されたのは西暦980年代。
発見したのはノルウェー生まれのアイスランドのヴァイキング「赤毛のエイリーク」とされます。
エイリークの父は殺人罪でノルウェーを追放されて一家でアイスランドに移住したが、エイリークもまた同じ理由でアイスランドを追放され、グリーンランド西南海岸のフィヨルドの奥に上陸した。
その地はグリーンランドで最も肥沃な土地で、エイリークは農場経営で財をなした。
「赤毛のエイリーク」はアイスランドで入植者を募ったが、魅力的な名前を付ければ人々がやって来てくれると考えグリーンランドと名付けたとされています。
しかし真実はもう少し複雑で、西暦800年から1300年にかけて、グリーンランド南部は現在よりもずっと暖かかったことが示唆されており、また古代スカンジナビアでは、物に見たままの名前を付けるのが一般的だったが「赤毛のエイリーク」が島の南西部に初めて降り立った西暦982年の夏は、おそらく草が青々としていたとの説もあります。
■北大西洋海流のお話し
しかし俯瞰してみるとアイスランドはグリーンランド南端よりも大分北にあるし、ノルウェーもグリーンランドと緯度があまり変わりません。
さらに見ればイギリスやデンマークもグリーランド南端とあまり緯度が変わりません。
ちなみに日本の最北端の宗谷が北緯45.52574度であるの対し、西ヨーロパ、例えばロンドンの緯度ははるかに北の北緯51.59348度、パリの緯度は北緯48.8566 2度です。
なのになぜ・・・・・・
グリーンランドは氷の島なのに、フランスやイギリスはおろかアイスランドや北欧にまで人が住めるのかというと北大西洋海流(North Atlantic Current)のおかげです。
海水温が高い北赤道海流に起源を持つメキシコ湾流は、カリブ海およびメキシコ湾に入り、フロリダ海峡を通って再び大西洋に流出し、その延長は暖流の北大西洋海流となり北上し、ヨーロッパやアイスランドを温めます。
そしてその恩恵を受けないグリーンランドは氷の島というわけです。
北大西洋海流の原動力はグリーランド沖で冷やされることによる海水の沈み込みです。
ところが温暖化で北極の氷が解け、海水の塩分濃度が薄くなると比重が軽くなり、沈み込み難くなります。
すると北大西洋海流が弱くなり、ヨーロッパの気候は逆に寒くなるなど大きな影響を与えます。
すでにその海洋サイクルに影響が出始めているという事ですが、EUが温暖化防止に積極的なのはそういう切実な事情もあるのでしょう。
■アイスランドと日本は繋がっている
糸魚川静岡構造線の東側は北米プレート、西側はユーラシアプレートですが、これを北に辿って行くと北極を超えて大西洋に至り、”大西洋中央海嶺”となります。
ここでユーラシアプレートと北米プレートは生まれますが、この海嶺が唯一地上に表れているのがアイスランドです。
出典:アイスランド(1)---- 地球の脈動を感じる旅(アイスランド南部)
これを地球儀的に見るとこのようになります。
日本とアイスランドは北米プレートとユーラシアプレートの境め。
”大西洋中央海嶺”で北米プレートユーラシアプレートが生まれるのですから、アイスランドの噴火は終わることがなさそうですね。
出典:レイキャネス半島
こうやってみると世界は面白いと思いませんか?
自然に比べれば人間なんてちっぽけなもの。
いがみ合ったり争ったりせずに、平和に生きて欲しいと思います。