【問題】Ⅰ-2 平成30年7月豪雨や北海道胆振東部地震などの被害を受け、平成30年12月14日に閣議決定された「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」が平成30年度から令和2年度に進められ、さらに令和3年度からは「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」が進められている。この状況を踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)社会の重要な機能を維持するため重要なインフラである上下水道が国土強靭化に資するため、対策すべき課題について、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)抽出した課題のうち、最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の具体的な対策を示せ。
(3)すべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)上記事項を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
※画像 : 内閣官房HPより 国土強靱化とは? (cas.go.jp)
【解説】
国土強靭化については、問題文にも示されている通り、平成30年12月に「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」が公表されました。
その後、国土強靭化に関する取組の加速化・深化を図るため、令和2年12月に「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」(これ以降「5か年加速化対策」)が公表されています。
このように国が、上下水道を含むインフラの強靭化を推進しており、このことが今年の試験で当該テーマについて出題された背景になっています。
5か年加速化対策は、3つの事業を展開した上で、123の対策を重点的・集中的に講じるものです。3つの事業は、以下のとおりです。
①激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策(これ以降「災害対策」)
②予防保全型インフラメンテンナンスへの転換に向けた老朽化対策(これ以降「老朽化対策」)
③国土強靭化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進(これ以降「デジタル化推進」)
また、5か年加速化対策は、123の対策を提示しています。
これら対策は、上述の①災害対策、②老朽化対策、③デジタル化推進に分類されます。
こらら対策のうち上下水道に関連するものとしては、災害対策では、
①流域治水対策、
②水道施設の耐災害性強化対策及び上水道管路の耐震化対策
③工業用水道の施設に関する耐災害性強化対策
④下水道施設の地震対策
が関連性が高いです。
また、老朽化対策においては、
⑤下水道施設の老朽化対策
が関連性が高いです。
ここで、必須Ⅰ-2の(1)を見てみましょう。
(1)社会の重要な機能を維持するため重要なインフラである上下水道が国土強靭化に資するため、対策すべき課題について、技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
この問題は、豪雨や地震等の災害対策に主眼を置いたものですが、問題文のなかに「上下水道が国土強靭化に資するため」という一文があります。このため、災害対策について詳述するだけではなく、前述した5か年加速化対策の内容を示すことが、解答を作成する際のポイントになります。
つまり、問題文のなかに「技術者としての立場で多面的な観点から3つ抽出し」という一文がありますが、この3つの観点とは、①災害対策、②老朽化対策、③デジタル化推進を意味することになります。
このうち何が最重要になるかと言えば、当然、①災害対策になります。
その具体として、以下の対策をコンパクトにまとめれば、解答の完成です。
①流域治水対策
②水道施設の耐災害性強化対策及び上水道管路の耐震化対策
③工業用水道の施設に関する耐災害性強化対策
④下水道施設の地震対策
ここからは、個人的な感想です。
問題文のなかに、具体的な基準や方針の名称が出てくるものは、こうしたものが記された文献に書いてある内容がアンサーになります。
この必須Ⅰ-2の場合、内閣官房が公表した「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」がその文献になります。
これをしっかりと読み込んで、試験に挑んだ方は、3つの観点で課題を整理して、災害対策について、説明できたと思います。満点近い点数を取ることができたと思います。
しかしながら、この文献を読んだことがない場合、①災害対策、②老朽化対策、③デジタル化推進という3つ観点は、ちょっと思いつかないです。ちなみに、僕も、今年度の予想問題を作るに当たって、この文献をしっかりと読み込んでいません。なぜなら、昨年度、選択Ⅲ-2で強靭化について出題されていたからです。
「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」を読まずして、この問題に挑んだ場合、一般的な防災・減災に関する観点で文書を作成することになります。例えば、①地震、②風水害、③事故という3つの観点に沿って、課題を整理して、①被害の予防、②バックアップ対策、③応急対応策という対策について詳述することになります。
このコンセプトで、解答を作成したら、なかなか厳しい採点結果になると思います。
ここで、この問題から得られらた2つの教訓です。
まず1つ目です。
2年連続で同じテーマが出題されることがある
ちなみに、必須Ⅰ-1も昨年度と同じテーマでした。
というわけで、油断をせず、前年度の問題も、ちゃんと勉強をしておくべきですね。
次に2つ目です。
問題文に「」付きで基準や方針の名称が出てくる場合、気を付けた方がいい
どんな記述試験も、必ず模範解答があります。
その模範解答から外れてしまうと、高得点は取れません。
そして、問題文に文献名称が具体的に示されていれば、当然、その文献の内容がそのまま模範解答になってしまいます。
そう考えると、もしも受験生がその文献を読んでいないのであらば、その問題を選択するのはリスキーになります。
解答例については、後日、アップしたいと思います。
●技術士の勉強法
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●二次試験の予想問題
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●過去問と解答例
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