読んだ本の数:17
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ナイス数:273

極真会館より輩出されたキラ星のごとき高弟たちの中で、国際大山空手道連盟を創設された大山茂師範(2016年2月15日に逝去)と双璧をなし、現在は世界誠道空手道連盟誠道塾会長として、アメリカを中心に活躍されてきた中村忠師範の自叙伝です。同会館の創始者である大山倍達総裁はかつて、自分の後継者を、中村師範にと考えていた時期があるそうですが、本書のハイライトでは大山総裁と中村師範の間に確執を抱え、痛切な思いで訣別し、自らの道を歩もうとする中村師範の思いがつづられており、読みながら胸が詰まるような思いがいたしました。
読了日:03月30日 著者:中村 忠

本書はアダルト業界の赤裸々な実態を描いた『名前のない女たち』(宝島社)シリーズなどの衝撃的なルポルタージュを発表するノンフィクション作家、中村敦彦氏による著作です。本書でスポットが当てられるのは現代の日本に約35万〜40万人存在する風俗嬢のうち、30歳を超える熟年女性たちです。中村氏の本を読んでいるとつくづく思うのは、日本の国は足元から徐々に崩れていると言うことであり、その現実を直視しなければ次には進めないことを教えてくれるのでした。内容が内容ですので読む人を選ぶ本なのかなと。読んでいる自分も自分ですが。
読了日:03月29日 著者:中村 淳彦

本書が刊行されたのは2006年。おそらく、執筆されたのは2004年から2005年前後から察すると、ちょうど当時ライブドアを率いていた堀江貴文氏が、ニッポン放送の買収を巡ってフジテレビの日枝久会長と熾烈な闘争を繰り広げていた時期のことで、本書を読みながら当時の記憶がよみがえってきました。時が流れてテレビ局側もネットを駆使して宣伝や視聴者の「声」を番組に反映させようとする試みが見受けられますが、当時もそして現在も本音のところは本気になってインターネット事業に取り組むことは未だタブーの部分が根強く残っております
読了日:03月23日 著者:吉野 次郎

本書は鈴木敏夫氏が『風の谷のナウシカ』の制作に携わった頃からスタジオジブリ初の海外との共同製作による作品である『レッドタートル ある島の物語』までの30年間の間に培ってきた鈴木流「宣伝哲学」である「宣伝の本質は仲間を増やすこと」というスローガンのもとに錚々たる監督と激論を交わし電通や博報堂などの広告代理店からアサヒ飲料などのタイアップに至るまで企業を巻き込み、朝から晩まで駆けずり回り汗まみれになって体得してきた経験則が新書サイズの中にみっちみちに詰まっております。伝えるとはどういうことかを語ってくれます。
読了日:03月20日 著者:鈴木 敏夫

この本は「歴史探偵」こと作家の半藤一利と、作家兼経営評論家の江坂彰両先生が語り合う「あの戦争の引き際とは?」について徹底的に語り合った対談本です。曰く「本書は『撤退戦の研究』(二〇〇〇年六月 光文社・カッパブックス。文庫判『日本人は 何故同じ亜失敗を繰り返すのか』二〇〇六年八月 光文社・知恵の森文庫)を復刊にあたって加筆修正したものです。」とあるので、何度も上梓されて世に問われたことが推察せられます。現在のエリートや組織がどのような形で「滅亡の道」を辿っていくかはある程度の「パターン」がある気がしました。
読了日:03月19日 著者:半藤一利,江坂彰

本書ではすでに何冊もの本を共著で上梓しておられる中東イスラーム地域研究を専攻される山内昌之先生と作家で元外務省主任分析官の佐藤優先生がテロ、IS、難民、米露、イラン、日中韓関係…混迷をきわめる世界情勢を「地政学」や「世界史」そして「インテリジェンス」等の観点から語った対談書です。山内先生の持つ尋常ではない世界史などの教養と外交の世界の表と裏を知り尽くした佐藤優先生による対談は今回もスリリングなものでありまして、出来ればここで語られていることは実際に起こってほしくないなと願いつつページをめくっておりました。
読了日:03月15日 著者:山内 昌之,佐藤 優

本書は評論家で批評誌『PLANETS』の編集長。宇野常寛氏とニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏による対談本です。宇野・吉田両氏はインターネットやラジオでの発信を積極的に行っている気鋭の論客であり、僕は両氏の著作をほぼすべてに目を通しており、さらには(自分の住んでいる地域では放送されていない分も含め)ネットなどを通して彼らの発信している動画やラジオ番組も見聞きしているので、ある程度すんなりと、読むことができました。本書は「別の視点」から物事を見るためにはとても参考になるでしょう。「実用書」としてもお薦め。
読了日:03月11日 著者:宇野常寛,吉田 尚記

1999年3月7日に逝去した著名な映画監督、スタンリー・キューブリックの生涯から長編デビュー作『恐怖と欲望』に始まり、遺作となった『アイズ・ワイド・シャット』にいたるまでの解説などを網羅したムック本です。僕が高校時代に見ていたキューブリック映画は『時計じかけのオレンジ』から『アイズ・ワイド・シャット』(コレはすでに時効であろう)であり、『スパルタカス』(この作品は生涯自分の作品とは認めていなかった)などの初期作品は残念ながら見ていなかったので、これを機会に見直してみようかなと、そんなことを考えております。
読了日:03月10日 著者:巽 孝之

現在に至るまで、大きな影響を受けてきた「不肖・宮嶋」こと宮嶋茂樹氏。僕は宮嶋氏の著作・写真集をほぼすべてに目を通してまいりましたが、本書は誰よりも戦場を知り、誰よりも戦争映画を愛する宮嶋氏が、独断と偏見で選んだ古今東西の戦争映画を宮嶋氏の独特な文体でひたすら熱く語り倒した戦争映画評論集です。初めて本書に出会ってから現在に至るまで本書で紹介されている映画に目を通したのは大体半分ぐらいであります。宮嶋氏に曰く、「男の子は戦争映画を観て、一人前の男に成長していくのである」というのもある種、納得がいくものでした。
読了日:03月09日 著者:宮嶋 茂樹

カント哲学研究の権威であり、「戦う哲学者」の異名を持つ中島義道先生の代表作です。現在は大学の職を辞し自らが主宰する『哲学塾 カント』にてそこに通う塾生を相手に哲学を教えておられるとのことで、中島先生によると、僕の地元からも通っている熱心な生徒がおられるそうで、僕はそれを聞いたときに大変驚いた事を現在でも覚えております。本書は中島義道先生の代表作の一つでありまして中島先生の異名のルーツであるテーマ「音漬け社会」に中島先生が徹底的に自らの哲学と論で戦いを挑み続け、あるいはその半生を記したまさに「激闘譜」です。
読了日:03月08日 著者:中島 義道

この本は日本の実業家であり、相場師としても数多くの仕手戦を勝ち抜き、また政治家でもあったなど、多くの顔を持つ糸山英太郎氏の自伝です。僕が読んでいて、今でも思い出すのは糸山氏が二十歳のころ、当時住んでいたアパートの一室で迎えた誕生日にコッペパンをかじり、焼酎でそれを嚥下しながら「要するに、カネなんだな…。」とうめくようにつぶやくシーンでした。今思えば、当時の糸山氏に自分を仮託することで、なんとかどうしようもない現実をやり過ごしていたのでしょう。結構アクの強い内容ですので、万人受けはしないかなと思っています。
読了日:03月07日 著者:糸山 英太郎

僕も今まで生きてきて、「中年の扉」が目の前に現れ、ギギーッと扉が開いたわけでありますが、太宰治の『人間失格』(新潮文庫ほか)よろしく「恥の多い生涯を送って来ました。」わけで参りまして、「なぜあの時、ああしてしまったんだろう…。」あるいは「なぜ私ではなく、あの人が?」
などなどの後ろ向きな思いが数限りなくありました。本書は「戦う哲学者」の異名を持つ中島義道先生が説く「後悔」や「自責」から世界と人間の在り方、ひいては「哲学」そのものの初心にせまる鮮やかでありながら、同時に読んでいるとどこか切なくなる一冊です。
読了日:03月06日 著者:中島 義道

本書は情報セキュリティ大学院大学客員准教授である小林雅一先生がAI(人工知能)の急速な発達による「来るべき新世界」を予言した書です。脳科学とテクノロジーが融合を果たし、今や自動運転車、ドローン、ロボット兵器、雇用・産業構造、医療・介護、芸術…。などあらゆる分野に進出しているALの「現在」が記されております。現在ある職業の大半が置き換えられるかも知れないなどをはじめとするAIのもたらす「脅威」に始まってAIが「人類を滅亡させる」かもしれないということへの真意。結構専門的な話が多いのですが、読み応えありです。
読了日:03月06日 著者:小林 雅一

本書は作家、町田康氏夫妻の愛犬であるスピンクが「主人ポチ」こと町田氏と奥様(ここでは「美微さん」と呼称される)と兄弟犬であるキューティー、シード。さらには猫たちの大家族の日常を彼の目線から綴った日記の第3弾です。本書で5歳を迎えたスピンクはまさに八面六臂の大活躍ぶりでありまして本書の基となった『スピンク日記』(講談社文庫)に加えて犬専門の雑誌では町田氏と共にモデルを務め、更には美微さんがオーナーを務める犬の保育園・ペットホテル『CASA DI SPINK ☆スピンクの家☆』の店長兼看板犬として活躍中です。
読了日:03月05日 著者:町田 康

哲学者・竹田青嗣教授に師事し、卒業後も薫陶を受けつづけている気鋭の哲学者、平原卓氏が自身のウェブサイトである「Philosophy Guides」を開設・運営していく中でたまっていったレジュメに大幅な加筆修正を加えて上梓したものが本書です。僕が哲学書を読みふけり始めたのは第1期が大学時代であり、上京して馬車馬のように働いていたり、自分のやりたいことをしていた時は(漫画を除けば)読書なるものは一切しておらず、3年で3冊程度という体たらくでした。本書はまさに時代の転換期を生き延びるために上梓されたのでしょう。
読了日:03月03日 著者:平原 卓

本書の著者は自身の事を「沢ヤ」と称する沢登りをメインに登山をするクライマー、宮城公博氏でありまして、きっかけは僕が毎週ほぼ欠かさず見ているTBS系列の『クレイジージャーニー』でしたが、本書で彼が僕と同い年であると知って、さらに衝撃を受けました。宮城氏が番組スタッフと共に「沢登り」をする場面があり、劇中で野営をする際に番組スタッフが「このまま寝るんですか?」との問いかけに対して「今日はそんなむちゃくちゃ寒くないし、焚き火近いから、これで全然。その辺の地べたで。」と宮城氏が平然と答えたのには驚いたものでした。
読了日:03月03日 著者:宮城 公博

僕が本書の存在を知ったのは作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が1960年の自身の出生時から1975年の埼玉県立浦和高校までを書いた自伝ノンフィクションである『先生と私 (幻冬舎文庫) 』(幻冬舎)において登場し、物語上の重要な「鍵」となっておりまして、佐藤優氏にいわく「説明が丁寧でわかりやすく、この本のおかげで哲学の入り口を間違えずに済んだ」と紹介しているものの、長らく絶版とされており、入手困難な稀覯書として扱われていた一冊だったのですが、見事PHP文庫より復刊したのです。最終的には読む人の『ご判断』で。
読了日:03月03日 著者:大井 正,寺沢 恒信
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