新聞や雑誌で取り上げられた水循環、水道、下水道に関する記事のうち、技術士試験で出題される可能性があるテーマ、継続研鑚の観点から勉強するべきテーマについて解説をしたいと思います。
今回は6月1日付けの『水道産業新聞』からです。テーマは「AIによる更新計画」です。
概要は以下のとおりです。
『AIで水道管の劣化予測/効率的な管路更新に向け
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豊田市上下水道局は、AIを活用した水道管劣化予測に着手する。
http://www.suidou.co.jp/200601.htm
●管路の更新
布設からの経過年数が長いほど、経年劣化が進むため、
管路の法定耐用年数は40年です。
この年数で更新すれば、管路の更新計画は完成します。
漏水事故はゼロにならないまでも、
ただし、そうはいかないのが現実です。
管路を40年周期で更新することは、毎年、全管路の2.5%
水道の資産の80%は管路だと言われています。
つまり、管路を法定耐用年数で更新することは、
この事業を行うことで、
水道料金の収入が右肩上がりならいいのですが、
そこで、登場するのが機能診断と劣化予測です。
管路の機能診断に基づき、劣化予測を行います。
その結果を踏まえて、管路をできるだけ長期間、
●管路の機能診断
管路の機能診断は、2つの方法に大別できます。
1つ目は、直接診断です。
2つ目は、間接診断です。
まず、直接診断です。管路の表面の劣化状況、
これにより、
ただし、管路の多くは埋設されています。
そこで、クローズアップされるのが間接診断です。
間接診断は、
机上で診断が完了します。
具体的には、以下のような評価項目があります。
これらを総合的に評価すれば、管路の劣化状況が推測できます。
①管体基本情報(布設年度、管種、口径、延長、
②埋設環境情報(土被り、土壌の腐食性、交通量等)
③水道水の状況(水圧、水量、水質)
④漏水量
⑤漏水事故情報(事故率)
⑥苦情件数(苦情率)
例えば、⑤漏水事故情報、⑥苦情情報が確認された管路は、
これらを抽出すれば、劣化状況を踏まえた更新が可能です。
しかしながら、管路の漏水や苦情が発生するまでは、
つまり、どこかで事故や苦情が発生するまで、
これは、対処療法です。
次に、耐用年数を法定の1.5倍にあたる60年に設定します。
60年経過で一律に更新するのであれば、事故の有無によらず、
しかしながら、60年が適切なのかどうか、
これだけでは、診断とは言い難いです。
そこで、第三案です。
過去の事故や苦情の案件について、管種、口径、経過年数、
例えば、事故が発生したときの管路の残存管厚z、経過年数tがわ
1次関数で単純に考えるなら、管路の腐食に関する予測式t=z/vで表現できます。
(実際には、
例えば、事故発生時の管厚が20mm、経過年数が50年だったな
同一土壌において管厚が60mmの管路があるなら、
腐食速度が0.4mm/年なら、この管路は100年使用できます
こうしたデータを収集すれば、土壌毎、
さらに、前述の①~⑥の評価項目も加味すれば、管路の「
そして、
●管路の更新計画
前述の方法を用いて、全管路の耐用年数を設定します。
これにより、更新時期を見極めることができます。
ただし、この方法だと、
限られた財源で管路を更新するためには、
また、前述の考え方では、
潜在的なリスクを考慮しないことが問題になります。
これまでは、「事故の起こりやすさ」
こうしたことから、更新について検討する場合は、⑧
⑧社会的情報とは、給水人口、給水量、商業施設、
この⑧社会的情報を、前述の①~⑦に加えて評価するべきです。
いろいろと説明しましたが、要するに、
逆に言えば、
これが「選択と集中」です。
●AIによる更新計画
こういった検討作業は、
技術的な検討に基づいて、
ただし、この作業をやるには経験と労力が必要です。
このため、
漏水事故や管路更新等の新たなデータが追加されても、
そこで登場するのがAIです。
様々なデータをシステムに転送します。
ビッグデータが存在するなら、AIが新たな予測式を構築します。
事業費の条件設定をすれば、更新すべき管路を抽出し、
どうやら、こうした時代が到来しているようです。
●前回の【技術士対策】
※前回分を読みたい方は こちら をどうぞ。
●必須科目対策に必要な下水道の基礎
※マネジメントサイクルについては こちら をどうぞ。
※アセットマネジメントとストックマネジメントの違いについては こちら をどうぞ。
※「持続と進化」については こちら をどうぞ。
※「資源の循環」については こちら をどうぞ。
※「水の循環」については こちら をどうぞ。
※「下水道による排除・処理」については こちら をどうぞ。
※「新下水道ビジョン加速戦略」については こちら をどうぞ。
●試験と解答例
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●試験対策
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