「入局希望です!よろしくお願いします。」
卒業を控えた医学部6年生の1月。
私は、念願の皮膚科に入局すべく、
入局願いをしたためて、医局を訪れた。

すると、皮膚科の偉い先生がこうおっしゃった。
「君は、女だから、うちには入れないよ。」
女だからって、どういうこと?
私は、納得できなかった。
なぜなら、私の1つ上の学年では、
女性で皮膚科に入局した卒業生が3名もいらっしゃったからだ。
「だって、先生。
皮膚科には、
女性の研修医の先生が、いらっしゃるじゃないですか?」
と、私は質問した。
すると、その男性の先生はこうおっしゃった。
「ダメだよ。
あの子たちは、全員、開業医達のお嬢さん達なんだよ。
君はただの漁師の娘じゃないか。
コネもない。
うちは、女性は医局人事の足手まといだから、
取らないんだよ。」
と、教えられた。

ショックだった。
高校生の時。
顔の皮膚炎がひどくて、
赤く黒ずんだ顔が恥ずかしく辛かった。
医者になるのなら、
皮膚科医になると、決意して医学部に入った。
その結果が、これだった。
もし、
皮膚科の入局が女性という理由だけで許されないのなら、
最初から、徳島大学になんか入らなかった。
もし、
もっと早い段階でその情報を得ていたのなら、
他の大学の皮膚科の医局に進んだ。
しかし、
全ては遅きに失した。
じゃあ、私はどうすればいいのだ?と
失意のどん底で、皮膚科医局を後にした。
私の6年間を返してくれよ!!!と叫びたかった。
悔し涙があふれた。
しかし、
3月初旬の卒業までに。。。
1月8日から、
心を切り替えて、
新たな就職活動を開始しなければならない。
心底、悔しかったけど。
こんなことで
ヘコんでいる暇はないのだ。
石にかじりついてでも、
早く医者として独り立ちしなければならない。
自力本願でしか、生き残る道はないのだ。
次の就活が
始まろうとしていた。
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